馬体重の増減は何kgから危険なのか|JRA約8.6万出走で見た増減別の勝率・回収率と、太め残りが実在する唯一の条件
パドックの馬体重表示を見て、「-12kg」という数字だけで印を下げていませんか。
「大幅減は走らない」「+20kgは太め残り」——競馬場でもよく聞く言い回しですよね。
ですが、中央競馬(JRA)の1勝クラス以上 約8.6万出走を前走からの増減別に集計すると、この2つは同じようには成り立ちませんでした。
減った側にははっきりした線が引けますが、増えた側には引けません。
しかも同じ「-12kg」でも、その馬が休み明けかどうかで意味が入れ替わります。
どこまでが割り引く材料で、どこからは見なくていい数字なのかを見ていきましょう。
・複勝率がはっきり落ちるのは10kg以上減った馬だけです。-9〜-4kgは全体とほとんど変わりません。
・+20kg以上は勝率8.1%で全区分の最上位です。「太め残り」は全体では確認できませんでした。
・同じ増減でも、休み明けか使い詰めかで評価が入れ替わります。
・太め残りがはっきり出るのは、ダートの休み明けで+10〜+19kg増えた馬だけでした。
「+20kgは太め残り」は成り立っているのか
まずは前走からの増減別に、そのまま並べます。
| 増減 | 勝率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 | 出走数 |
|---|---|---|---|---|---|
| -20kg以上減 | 5.1% | 13.2% | 191% | 83% | 272 |
| -19〜-10kg | 5.5% | 18.0% | 72% | 75% | 4,561 |
| -9〜-4kg | 7.5% | 21.5% | 77% | 71% | 17,751 |
| -3〜+3kg | 7.4% | 22.4% | 71% | 73% | 35,358 |
| +4〜+9kg | 7.6% | 23.0% | 69% | 74% | 19,154 |
| +10〜+19kg | 7.0% | 22.1% | 71% | 72% | 7,644 |
| +20kg以上増 | 8.1% | 21.4% | 78% | 71% | 933 |
成績が落ちているのは、表のいちばん上の2つだけです。
読み取れることを3つに整理します。
- 成績が落ちるのは減った側だけ。-20kg以上減の13.2%と-19〜-10kgの18.0%が、全体の22.1%を大きく下回ります
- -9〜-4kgから+20kg以上増までは横ばい。複勝率は21.4%から23.0%の範囲に収まります
- +20kg以上増の勝率は8.1%で最上位。増えた側に成績の落ち込みは見られません
ただし+20kg以上増は出走数が933と少なく、ここだけを取り出して「買い」と言えるほどの差ではありません。
大事なのは、増えた側の成績が落ちていないことです。
一方、減った側ははっきり落ちます。
-9〜-4kgの21.5%に対して、-19〜-10kgは18.0%です。
線が引かれるのは10kgでした
見るべきは「増えたか減ったか」ではなく「10kg以上減ったかどうか」で、増えているというだけなら印を下げる必要はありません。
同じ「-12kg」でも、レース間隔で意味が変わる
馬体重の増減は、レース間隔と切り離せません。
間隔が空けば馬体は戻り、使い込めば削られていくからです。
つまり「+15kg」の多くは休み明けの馬、「-15kg」の多くは使い詰めの馬ということですね。
そこで放牧明けの10〜25週と、使い詰めの2〜4週に分けて同じ増減区分を比べました。
全体の複勝率は10〜25週が21.4%、2〜4週が22.7%で、休み明けのほうが1.3ポイント低くなります。
右端はその差を差し引いた数字で、プラスなら休み明け、マイナスなら短い間隔のほうが良いという意味です。
| 増減 | 10〜25週の複勝率 | 出走数 | 2〜4週の複勝率 | 出走数 | 休み明け側の差 |
|---|---|---|---|---|---|
| -19〜-10kg | 19.0% | 1,287 | 17.6% | 1,668 | +2.7 |
| -9〜-4kg | 21.5% | 5,189 | 21.8% | 6,353 | +1.0 |
| -3〜+3kg | 21.7% | 10,132 | 22.9% | 12,751 | +0.1 |
| +4〜+9kg | 21.9% | 5,014 | 24.0% | 7,425 | -0.9 |
| +10〜+19kg | 20.2% | 1,528 | 23.8% | 3,475 | -2.3 |
| +20kg以上増 | 19.9% | 166 | 22.6% | 478 | -1.4 |
右端の数字が、上から下へきれいに減っていきます。
減った馬は休み明けのほうが良く、増えた馬は間隔が詰まっているほうが良い、という並びですね。
6つの区分がすべて同じ向きに並んでおり、偶然でこうなる確率は1%を下回ります。
意味を考えれば自然な並びで、同じ増減でも間隔によって読み方が入れ替わります。
- 休み明けで減っている → 放牧を挟んでしぼれて戻ってきた形です。好材料になります
- 使い詰めで減っている → レースを使うたびに削られている形です。消耗のサインになります
- 使い詰めで増えている → 使いながら充実して馬体が張ってきた形です。好材料になります
- 休み明けで増えている → まだ仕上がりきっていない形です。太め残りを疑います
ですから、馬体重の数字だけを見ても答えは出ません。
レース間隔そのものの成績は休み明けの馬は買えるのかにまとめてあるので、出馬表の前走日付とあわせて見てください。
太め残りが実在するのはダートの休み明けだけ
増えた側を、もう少し細かく見てみます。
芝とダートに分けたうえで、レース間隔もそろえました。
下の表は、+10〜+19kg増えた馬だけを取り出したものです。
| 条件 | 複勝率 | 出走数 | 同じ条件の全体 |
|---|---|---|---|
| 芝・10〜25週 | 24.7% | 761 | 23.3% |
| 芝・2〜4週 | 25.1% | 1,570 | 21.9% |
| ダート・10〜25週 | 15.8% | 767 | 19.6% |
| ダート・2〜4週 | 22.8% | 1,905 | 23.4% |
芝では、どちらの間隔でも全体を上回っています。
ダートは逆です。
とくに10〜25週のダートは15.8%まで落ち、同じ条件の全体19.6%を3.8ポイント下回ります。
全馬の22.1%と比べれば、6.3ポイント下です。
太め残りがはっきり出るのはこの一角だけでした
この差について、押さえておきたい点が3つあります。
- 差が出るのは+10〜+19kgだけ。他の区分は、間隔をそろえて比べると芝とダートで違いが出ませんでした
- +20kg以上増は判断できない。同じ向きに見えますが、出走数が少なすぎます
- 芝では減点材料にしない。芝の+10〜+19kgは、どちらの間隔でも全体を上回っています
ダートの休み明けで10kg以上増えている馬なら、印を下げる根拠があります。
人気馬の馬体重を見ても意味がない
人気別に分けると、もっとはっきりします。
まずは1〜3番人気だけを取り出した数字です。
| 増減 | 勝率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 出走数 |
|---|---|---|---|---|
| -19〜-10kg | 19.3% | 49.7% | 71% | 731 |
| -9〜-4kg | 22.1% | 50.8% | 81% | 3,768 |
| -3〜+3kg | 21.0% | 50.6% | 77% | 7,897 |
| +4〜+9kg | 21.1% | 51.1% | 77% | 4,421 |
| +10〜+19kg | 20.8% | 52.8% | 71% | 1,709 |
| +20kg以上増 | 23.7% | 50.5% | 89% | 194 |
複勝率は49.7%から52.8%の間に収まっており、差は3ポイント程度にすぎません。
出走数を考えれば誤差の範囲で、上位人気では馬体重がどう動いても成績が変わりませんでした。
一方、4番人気以下では差が出ます。
-19〜-10kgの複勝率は11.9%で、4番人気以下の全体14.0%を2.1ポイント下回りました。
馬体重が効くのは人気薄だけ、ということですね。
本命馬の馬体重を見て切ってもデータの裏付けはなく、見るならヒモを迷っている人気薄のほうです。
牝馬は本当に馬体重の減少に弱いのか
「牝馬の10kg減は危険」という見方があります。
牝馬だけを取り出して、同じ形で集計しました。
| 増減 | 複勝率 | 牝馬全体との差 | 出走数 |
|---|---|---|---|
| -19〜-10kg | 15.4% | -4.7 | 1,771 |
| -9〜-4kg | 19.9% | -0.2 | 6,683 |
| -3〜+3kg | 20.6% | +0.5 | 12,997 |
| +4〜+9kg | 21.0% | +0.9 | 7,223 |
| +10〜+19kg | 19.9% | -0.2 | 3,065 |
| +20kg以上増 | 19.0% | -1.1 | 368 |
-19〜-10kgは、牝馬全体より4.7ポイント低い数字です。
ただし全馬で同じ計算をすると4.1ポイント低くなるので、落ち込みの大きさはほとんど変わりません。
「牝馬は減に弱い」という事実は確認できませんでした。
もともと牝馬の複勝率が低いぶん、数字だけを見ると弱く見えるだけですね。
ですから、牝馬だからという理由で減少をさらに割り引く必要はありません。
どの区分も回収率では儲からない
ここまで複勝率で見てきましたが、回収率はどうでしょうか。
最初の表に戻ると、こうなっています。
- 単勝回収率:どの区分も69%から78%の範囲に収まります
- 複勝回収率:同じく71%から75%の範囲です
- 例外は-20kg以上減だけ:単勝回収率191%ですが、出走数は272しかありません
どの区分を機械的に買っても、控除率のぶんだけ負ける形ですね。
馬体重の増減は、すでにオッズに織り込まれていると考えたほうがよさそうです。
飛び抜けている-20kg以上減も、14勝の平均配当が約3,700円で、数本の大きな配当が効いているだけです。
ですから馬体重で妙味を探すのではなく、買う馬を絞る材料として使うのが現実的です。
パドックでどう使うか
ここまでの結果を、馬券を組み立てるときの判断材料として整理します。
- 増えているだけで割り引かない。+20kg以上でも勝率8.1%で、全区分の最上位でした
- 線を引くのは10kg減から。-9〜-4kgの複勝率は21.5%で、全体の22.1%とほとんど変わりません
- 前走日付とセットで見る。休み明けの減少は好材料、使い詰めの減少は消耗のサインです
- ダートの休み明けで10kg以上増は割り引く。複勝率15.8%で、はっきり成績が落ちる唯一の組み合わせでした
- 芝では増加を減点材料にしない。芝の+10〜+19kgは、どちらの間隔でも全体を上回りました
- 人気馬の馬体重は見なくていい。1〜3番人気では増減で成績が変わりませんでした
- 牝馬を特別扱いしない。落ち込みの大きさは全馬と変わりません
馬体重の増減は、それ単体では読めない数字でした。
前走からどれだけ間隔が空いたかで意味が入れ替わり、そこに芝かダートか、何番人気かが重なって答えが決まります。
パドックの数字だけで判断せず、出馬表と並べて見てください。
- 出典:JRA 公式・JBIS Search の公開データをもとに当サイトが集計
- 集計期間:2023年1月〜2026年5月の中央競馬平地競走
- 集計対象:1勝クラス以上(新馬・未勝利・障害を除く)の約8.6万出走。前走の馬体重と比較できる出走に限ります
- 増減の区分:前走からの馬体重差。-20kg以上減・-19〜-10kg・-9〜-4kg・-3〜+3kg・+4〜+9kg・+10〜+19kg・+20kg以上増の7区分
- 注意:区分によって出走数に偏りがあり、出走数の少ない区分は確定値ではない点にご注意ください
- レース間隔そのもののデータを見たい人 → 休み明けの馬は買えるのか
- 厩舎で見分けられないか気になる人 → 休み明けが得意な厩舎はあるのか
- 人気馬を切る基準がほしい人 → 1番人気が飛ぶ条件と危険な人気馬の見分け方
- 募集馬の馬体重の見方を知りたい人 → 募集馬の測尺(馬体重・管囲)の見方
- 期待値で買い目を決めたい人 → 競馬の期待値の計算方法
