競馬場の坂と高低差【JRA全10場】|「どこに坂があるか」で脚の使いどころが変わる
海外の大レースに日本馬が出走すると、コースの起伏の違いがはっきり見えることがあります。
序盤の下りで脚を使い、道中の長い上りでさらに削られ、直線を向いたときには余力が残っていない——そんな負け方です。
ヨーロッパと日本では馬場もレース質も違いますが、日本の競馬場にも決して小さくない高低差が設けられています。
しかも重要なのは高低差の大きさそのものより、その坂がコースのどこにあるかです。
このページでは、JRA公式が公開しているコースデータをもとに、全10場の起伏を「坂の位置」という視点で整理します。
JRA全10場の高低差と直線距離
まず全体像です。芝コースの数値を、高低差の大きい順に並べました。
| 競馬場 | 直線距離 | 高低差 | 坂の位置 |
|---|---|---|---|
| 中山 | 310m | 5.3m | 残り180m〜70mに急坂(高低差2.2m・最大勾配2.24%) |
| 京都 | 323.4m(内)/ 398.7m(外) | 3.1m(内)/ 4.3m(外) | 3コーナー付近だけに勾配、他はほぼ平坦 |
| 中京 | 412.5m | 3.5m | 直線入口に上り坂(高低差約2m・勾配約2%) |
| 函館 | 262.1m | 3.5m | 2コーナー〜4コーナーがだらだらとした上り |
| 小倉 | 293m | 3.0m | 直線は平坦。2コーナーに丘がある |
| 東京 | 525.9m | 2.7m | 道中に下り1.9mと上り1.5mの2つの起伏 |
| 阪神 | 356.5m(内)/ 473.6m(外) | 1.9m(内)/ 2.4m(外) | ゴール前に急坂(高低差1.8m・勾配1.5%) |
| 新潟 | 358.7m(内)/ 658.7m(外) | 0.8m(内)/ 2.2m(外) | 外回りは直線前に緩い下り(高低差1.6m) |
| 福島 | 292.0m | 1.9m | 残り170m〜50mに上り(高低差1.2m)。1周で2回アップダウン |
| 札幌 | 266.1m | 0.7m | ほぼ平坦 |
直線距離はAコース使用時の値で、内・外回りのあるコースは併記しています。
高低差が最も大きいのは中山の5.3mで、最も小さい札幌の0.7mとは7倍以上の差があります。
中山の5.3mは、JRAの解説では2階建ての建物に相当すると表現されています。
なお中京の3.5mは函館と同値で、公式ページでは「中山、京都に次いで全場3位」と紹介されています。
大事なのは数字より「坂の位置」
同じ高低差でも、坂がどこにあるかでレースの質はまるで変わります。
全10場を坂の位置で分けると、おおまかに4つの型になります。
① ゴール前に急坂がある(中山・中京・阪神・福島)
最も分かりやすい型です。
直線で脚が上がった馬がはっきり止まるため、先行して押し切るか、坂で差すかという決着になりやすくなります。
軽快に飛ばしてきた馬が直線の急坂で失速し、形勢が一変することも多い、というのがJRAによる中山の説明です。
② 道中に丘がある(京都・小倉・函館)
坂が直線ではなくコースの途中にある型です。
上りで脚を使わされ、下りで勢いがついた状態で直線を迎えるため、道中のどこでペースが動くかが結果を左右します。
冒頭で触れた海外レースの負け方は、この型が極端になったものと考えると分かりやすいです。
③ 長い直線の中に起伏がある(東京)
東京は直線525.9mと長く、そこに高低差2.7mが組み合わさります。
なお直線が最も長いのは新潟の外回りで658.7mです。
坂そのものは急ではありませんが、長い直線で脚を持続させる力が問われます。
④ ほぼ平坦(札幌・新潟内回り)
札幌はJRAの説明でも「ほぼ平坦」とされ、高低差は0.7mしかありません。
起伏で脚を削られない分、スピードの絶対値がそのまま出やすいコースになります。
主要場の起伏を具体的に見る
ここからは公式の記述をもとに、代表的な4場を個別に見ていきます。
中山:日本一の急坂
ゴール前の上り坂は残り180m地点から残り70m地点にかけて設けられています。
この坂の高低差は2.2m、最大勾配2.24%は10場で最大で、JRAはこれを日本一の急坂と表現しています。
さらにコース全体では、2コーナー手前の最高点からホームストレッチ半ばまで長い下りが続きます。
下って勢いがついた状態から急坂に突き当たる構成で、直線310mと短いため、瞬発力よりも持久力が問われやすくなります。
中京:坂を上りきってもまだ200m余りある
中京の上り坂は直線に向いてすぐの地点にあり、勾配は約2%(高低差約2m)です。
中山の2.24%には及びませんが、阪神や東京より急な坂だとJRAは説明しています。
そして坂を上りきってからゴールまで、まだ200m余りが残ります。
坂で消耗したうえで平坦を走り切る必要があるため、タフな設定になっています。
阪神:内回りと外回りで下りの開始地点が違う
ゴール前の上り坂は高低差1.8m、勾配1.5%です。
その手前の下りは内回りが残り800m、外回りが残り600mから始まります。
同じ阪神でも、どこから加速が始まるかが内・外で変わる点は押さえておきたいところです。
京都:3コーナーに小高い丘
京都は勾配がついているのが3コーナー付近だけで、それ以外はほぼ平坦という構成です。
JRAはこれを「3コーナーに小高い丘が設けられている競馬場」と表現しています。
向正面の半ばから3コーナーにかけて上り、4コーナーにかけて一気に下るため、直線に入る前に脚勝負が始まります。
東京:直線の前に2つの起伏がある
1コーナーから向正面半ばにかけて高低差1.9mの長い下りがあり、その直後の3コーナー手前に高低差1.5mの上りが待ちます。
直線が長いことに目が行きがちですが、そこへ向かうまでに下って上る構成になっています。
では、坂に強い馬はどう見分けるか
ここまではコース側の話でした。
実際に馬券を買うときは、その坂を得意とする馬をどう見つけるかが次の問題になります。
馬体・走法・蹄といった馬側の見極め方は、別記事で整理しています。
コース側の構造と馬側の適性、この2つを重ねると予想の精度が上がります。
海外の競馬場はどうなっているか
比較の対象として、海外主要コースの起伏も整理しています。
アスコットの高低差は約20mで、JRAの記載では中山の約4倍にあたります。
まとめ
高低差の数字だけを覚えても、実戦ではあまり役に立ちません。
坂がゴール前にあるのか、道中にあるのか、それとも平坦なのか——この違いが脚の使いどころを決めます。
観戦するときに起伏を意識すると、なぜあの馬が最後に止まったのかが見えやすくなります。
参考(出典)
本記事の高低差・直線距離・勾配は、JRA公式サイトの各競馬場コース紹介ページの記載によります。
