前走の着差は次走に効くのか|ハナ差負けは買いか、大敗は消しか、勝率と回収率で検証
出馬表の前走欄に「0.1秒差の2着」と並んでいるのを見て、次は勝てそうだと思ったことはありませんか。
「僅差の負けは次走買い、大きく負けた馬は消し」——競馬を続けているとよく聞く話ですよね。
そこで、中央競馬(JRA)の約7.4万件の出走データ(1勝クラス以上)を、前走でどれだけ負けたかで分けて集計しました。
たしかに、タイム差なしで負けた馬の複勝率は43.2%ありました。
これは1.0〜1.9秒差で負けた馬の15.0%の、3倍近い数字です。
ところが、この差を作っていたのは着差ではありませんでした。
正体をたどると、着差を見る価値がある場面は2つだけに絞られます。
何が差を作っていたのか、どこなら使えるのかを順に見ていきましょう。
・タイム差なしで負けた馬は、たしかによく走ります。複勝率は43.2%で、1.0〜1.9秒差だった馬の15.0%の3倍近くあります。
・ただしその差は着差ではなく前走の着順が作っています。タイム差なしで負けた馬の97.6%は、前走2着か3着でした。
・同じ着順どうしで比べると、着差の差はほとんど消えます。前走4着の馬は、0.1〜0.2秒差でも0.6〜0.9秒差でも複勝率が1ポイントも変わりません。
・2.0秒以上の大敗だけは別です。複勝回収率が53%〜63%まで落ち、同じ着順の馬と比べても残りました。
・いちばん損が小さいのは0.6〜0.9秒差です。単勝回収率79%・複勝回収率76%で、着順でも馬場でも人気でも同じ傾向でした。
前走でどれだけ負けたかで、次走の成績は変わるのか
まずは前走の着差、つまり勝ち馬とのタイム差で8つに分けます。
先頭の「0.0秒」は、ハナ差やアタマ差のようにタイム差がつかなかった負けを指します。
| 前走の着差 | 勝率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 | 出走数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.0秒 | 17.2% | 43.2% | 65% | 74% | 1,783 |
| 0.1〜0.2秒 | 14.8% | 38.1% | 75% | 76% | 6,927 |
| 0.3〜0.5秒 | 9.9% | 29.4% | 75% | 75% | 12,741 |
| 0.6〜0.9秒 | 7.0% | 22.2% | 79% | 76% | 17,153 |
| 1.0〜1.9秒 | 4.2% | 15.0% | 73% | 73% | 24,163 |
| 2.0〜2.9秒 | 2.8% | 10.1% | 63% | 63% | 7,668 |
| 3.0〜3.9秒 | 1.9% | 8.2% | 47% | 53% | 2,441 |
| 4.0秒以上 | 3.1% | 9.6% | 79% | 73% | 1,577 |
複勝率は43.2%から8.2%まで、着差が開くほど下がっていきます。
いちばん下の4.0秒以上だけは複勝率が9.6%に上がりますが、ここは出走数が1,577件と少ない区分です。
ここまでは定説どおりです。
この表だけを見れば、僅差で負けた馬を買って、大きく負けた馬を消せばよいことになります。
「タイム差なしで負けた馬」とは、どんな馬なのか
0.0秒差で負けた1,783件の出走について、前走の着順を調べます。
| 前走の着差 | 出走数 | うち前走2着 | うち前走3着 | 2着と3着で |
|---|---|---|---|---|
| 0.0秒 | 1,783 | 1,467 | 273 | 97.6% |
| 0.1〜0.2秒 | 6,927 | 3,053 | 2,053 | 73.7% |
0.0秒差の97.6%は、前走2着か3着でした
しかも82.3%は前走2着です。
当然といえば当然で、タイム差なしまで迫れる位置にいた馬は、そのまま2着や3着に入っているからです。
つまり「タイム差なしで負けた馬」という区分は、「前走2着の馬」の言い換えに近いものになっています。
最初の表は着差の効果ではなく、前走着順の効果を見ていた疑いが出てきます。
同じ着順の馬どうしで比べると、着差は効くのか
疑いを晴らす方法はひとつです。
前走の着順を固定して、その中だけで着差を動かします。
| 前走の着順 | 0.1〜0.2秒 | 0.3〜0.5秒 | 0.6〜0.9秒 | 1.0〜1.9秒 |
|---|---|---|---|---|
| 前走2着 | 43.8% | 39.6% | 37.4% | — |
| 前走3着 | 37.7% | 37.2% | 35.0% | 30.5% |
| 前走4着 | 31.0% | 30.9% | 30.2% | 26.3% |
| 前走5着 | 26.8% | 27.5% | 25.2% | 21.4% |
表の数字は複勝率です。
同じ着順の中では、着差はほとんど効きません
前走4着の馬は、着差が広がっても成績が変わらない
前走4着の行を見てください。
0.1〜0.2秒差が31.0%、0.6〜0.9秒差が30.2%で、その差は0.8ポイントしかありません。
最初の総合表では、同じ幅で38.1%から22.2%まで15.8ポイントも動いていました。
あの勾配は、着差ではなく着順が作っていたことになります。
前走3着では、差が完全に消える
0.0秒差と0.6〜0.9秒差を比べたときの差の大きさを、3通りの比べ方で並べます。
- 総合で比べると 2.66倍
- 前走2着どうしで比べると 1.38倍
- 前走3着どうしで比べると 1.06倍
前走3着どうしなら差は1.3ポイントで、この程度の違いは集計のばらつきの範囲に収まります。
前走2着でだけ小さく残りますが、これは「2着なのに大きく離された馬は、勝ち馬が強かっただけ」という別の話です。
前走の着順を見ているなら、その横の着差は追加の情報になりません。
同じことは前走の上がり3ハロンでも起きていて、当サイトの検証では上がり最速の効果も同じ着順どうしで比べると4分の1に縮みました。
前走の着順そのものの効き方は前走1着の馬は本当に買いなのかにまとめています。
芝とダート、人気の違いで結果は変わるのか
ダートは前が止まりにくいぶん着差が開きやすいので、同じ0.5秒でも意味が違ってよさそうです。
ところが0.0秒差と0.6〜0.9秒差の開きは、芝で2.74倍、ダートで2.62倍でした。
複勝回収率も0.0秒差で芝74%・ダート73%と、ほとんど同じです。
人気で分けても同じで、着差の効き方が人気によって変わることはありませんでした。
馬場や人気で使い分ける余地もない、ということです。
それでも消せる馬はいる
ここまでは着差に価値がないという話でしたが、例外が1つあります。
複勝回収率を、着差の大きい側だけ並べます。
| 前走の着差 | 全体 | 前走10着以下 | 人気4番以下 |
|---|---|---|---|
| 1.0〜1.9秒 | 73% | 72% | 72% |
| 2.0〜2.9秒 | 63% | 60% | 62% |
| 3.0〜3.9秒 | 53% | 53% | 53% |
| 4.0秒以上 | 73% | 76% | 75% |
2.0秒から3.9秒のところで、はっきり落ち込みます。
人気4番以下では複勝回収率53%・単勝回収率46%まで下がり、この記事で見たどの数字よりも低く出ました。
大敗だけは同じ着順で比べても割り引けます
前走10着以下の馬に限っても、1.0〜1.9秒差の72%から3.0〜3.9秒差の53%まで落ちています。
前走で2秒以上負けていたら、着順を確かめるまでもなく割り引けます。
4.0秒以上で複勝回収率が上がるのは最初の表と同じで、こちらは参考値として扱ってください。
いちばん損が小さいのは、どの着差か
回収率をもう一度見ると、いつも同じ区分が上に来ていることに気づきます。
| 分け方 | 出走数 | 単勝回収率 | その平均 | 複勝回収率 | その平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| 前走2着 | 473 | 82% | 72% | 69% | 75% |
| 前走3着 | 1,221 | 82% | 72% | 82% | 79% |
| 前走4着 | 1,868 | 90% | 81% | 81% | 76% |
| 前走5着 | 2,270 | 76% | 78% | 75% | 75% |
| 前走6〜9着 | 8,169 | 76% | 72% | 73% | 72% |
| 前走10着〜 | 3,152 | 81% | 71% | 78% | 69% |
| 芝 | 9,367 | 80% | 72% | 76% | 73% |
| ダート | 7,786 | 78% | 74% | 75% | 72% |
| 人気1〜3番 | 3,486 | 76% | 75% | 82% | 77% |
| 人気4番以下 | 13,650 | 80% | 72% | 74% | 71% |
| 総合 | 17,153 | 79% | 73% | 76% | 73% |
単勝回収率が平均を超えたのは11通りのうち10です
複勝回収率でも、平均を下回ったのは11通りのうち1つだけでした。
上位人気の馬なら複勝、人気薄の馬なら単勝のほうが、回収率は高くなります。
単勝と複勝の両方で平均を下回った分け方は、ひとつもありませんでした。
なぜこの区分だけオッズが高いのか
前走4着の馬で比べると理由が見えます。
0.3〜0.5秒差の勝率が10.6%、0.6〜0.9秒差が9.6%で、成績はほぼ同じです。
ところが平均の単勝オッズは7.1倍から9.3倍まで上がります。
完敗に見える負け方をした馬ほど、成績は変わらないのに単勝オッズだけ高くなる、ということです。
ただし買えば儲かるわけではありません。
単勝も複勝も払戻率は80%なので、回収率79%はようやく平均的な水準に届いたところです。
言えるのは、負けた馬の中では損がいちばん小さい区分だ、というところまでです。
いちばん割に合わないのは、僅差で負けた馬の単勝
逆に、最初の表でいちばん成績が良かった0.0秒差はどうでしょうか。
| 分け方 | 出走数 | 単勝回収率 | その平均 | 複勝回収率 | その平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| 総合 | 1,783 | 65% | 73% | 74% | 73% |
| 人気1〜3番 | 877 | 66% | 75% | 74% | 77% |
| 人気4番以下 | 900 | 65% | 72% | 74% | 71% |
僅差負けの単勝は、どの人気でも平均割れです
複勝はどれも74%で、単勝ほどの落ち込みはありません。
平均の単勝オッズが3.8倍まで下がっていて、成績のよさがそのまま買われているからです。
僅差で惜しかった馬を狙うなら、単勝ではなく複勝にしておくほうが無難です。
出馬表でどう使うか
前走の着差について、この集計から言えることは4つです。
- 前走の着順を見ているなら、着差は見なくてよい。同じ着順の中では差が出ません
- 2.0秒から3.9秒の負けは割り引ける。前走の着順が同じ馬と比べても回収率が下がります
- 0.6〜0.9秒差は損が小さい。成績は変わらないのに単勝オッズだけ高くなります
- 僅差で負けた馬の単勝は避ける。複勝なら平均並みです
出馬表の着差欄は、ほとんどの場面で見る必要がありません。
見るとしたら、2秒以上の大敗を消すときと、完敗に見える馬のオッズを疑うときの2回だけです。
- 出典:JRA 公式・JBIS Search の公開データをもとに当サイトが集計
- 集計期間:2023年1月〜2026年5月の中央競馬平地競走
- 集計対象:1勝クラス以上(新馬・未勝利・障害を除く)約7.4万件(74,453件)の出走データ。前走で2着以下だった出走に限ります(前走1着は含みません)
- 着差:勝ち馬とのタイム差で8区分。重複はありません。0.0秒はハナ差・アタマ差など、タイム差がつかなかった負けです
- 人気別の集計:人気1〜3番と人気4番以下を足すと74,336件で、総数との差117件は今走の人気が確認できない出走です
- 差の判定:複勝率の差は統計的な検定で確かめています。本文で「ばらつきの範囲」と書いた箇所は、検定でも差が確認できなかったものです
- 回収率:払戻金を購入金額で割った割合です。100%で収支がトントンで、単勝と複勝の払戻率は80%なので、80%が平均的な水準になります
- 注意:前走6〜9着と前走10着以下は着順の幅が広いため、区分の中に着順の違いが残っています
- 注意:区分によって出走数に偏りがあり、出走数の少ない区分は確定値ではない点にご注意ください
- 前走の着順から絞り込みたい人 → 前走1着の馬は本当に買いなのか
- 同じ「正しいのに儲からない」構造を知りたい人 → 前走の上がり最速は本当に買いなのか
- 前走からの距離の変化を見たい人 → 距離短縮は本当に買いなのか
- 芝とダートの替わりを見たい人 → ダート替わりは本当に一変するのか
- 期待値で買い目を決めたい人 → 競馬の期待値の計算方法
