種牡馬の種付け頭数の推移|生産者の評価は何年目に分かれるか
一口馬主の募集やPOGの指名で、父の評価をどう測ればいいか迷っていませんか?
その手がかりになるのが、毎年の種付け頭数です。
種付け頭数には、生産者の期待がそのまま表れます。
JBIS の公開データで 254 頭の種牡馬の種付け頭数を種付年度ごとに集計すると、多くの父に共通する増え方・減り方が見えてきました。
個々の父の頭数を見るときも、この共通の動きと比べると「期待されているのか」が読めます。
- 種付け頭数が供用何年目に減りやすいか
- 5 年目に頭数が増える父と減る父の違い
- 平均型と一発型、長く支持されるのはどちらか
- 主な種牡馬 26 頭の直近 3 年の種付け頭数
- 一口馬主・POG での使い方
種付け頭数で何がわかるのか
種付け頭数は、その年にその種牡馬を種付けした繁殖牝馬の数です。
生産者は種付料を払い、1 年に 1 頭しか産めない繁殖牝馬の相手として父を選びます。
そのため、頭数の増減には「この父の子を走らせたい」という期待がいちばん素直に出ます。
種付けした年と、生まれた産駒がデビューする年の関係は次のとおりです。
- 種付年度:2〜6 月ごろの種付けシーズン
- 産駒の誕生:種付年度の翌年の春
- 産駒のデビュー:種付年度に 3 を足した年の 6 月以降(2 歳戦)
たとえば 2023 年度に種付けされた世代は、2024 年に生まれて 2026 年にデビューします。
一口馬主で 1 歳馬の募集を見るときは、その馬が何年度の種付けで、その年の父の頭数が多かったか少なかったかを確かめられます。
種付け頭数は供用何年目に減るのか
8 年以上供用された種牡馬 120 頭について、1 年目の頭数を 100% として各年の頭数を並べると次のようになります。
| 供用年数 | 1 年目との比較(中央値) | 初年度産駒の状況 |
|---|---|---|
| 1 年目 | 100% | まだ生まれていない |
| 2 年目 | 93% | 当歳(0 歳) |
| 3 年目 | 85% | 1 歳(募集・セリの年) |
| 4 年目 | 81% | 2 歳(デビュー前に種付けが終わる) |
| 5 年目 | 90% | 3 歳(2 歳戦の結果が出たあと) |
| 6 年目 | 72% | 4 歳 |
| 8 年目 | 60% | 6 歳 |
| 10 年目 | 56% | 8 歳 |
頭数がいちばん落ち込むのは、初年度産駒がまだデビューしていない 3〜4 年目です。
新しい父への期待はあっても、走る姿を見るまでは様子見する生産者が増えるためです。
そして初年度産駒の 2 歳戦が終わった 5 年目に、頭数は 1 年目の約 90% まで戻ります。
ただし、この「5 年目の戻り」は長く供用された父だけで見たときの姿です。
5 年以上供用された 178 頭に広げると、5 年目は 1 年目の 72% で、戻りは見られません。
結果を出せなかった父は 5 年目も減り続け、やがて種付けが少なくなります。
つまり 5 年目は、産駒の結果しだいで父の評価がはっきり分かれる年です。
新しい種牡馬を見るときは、3〜4 年目に 1 年目の 8 割を保っていれば、平均並みかそれ以上に期待されていると読めます。
5 年目に頭数が増えるかどうかは何で決まるのか
5 年目まで供用された 173 頭を、初年度産駒の 2 歳戦の成績で分けると、5 年目の増え方ははっきり違いました。
まず、2 歳のうちに勝ち上がった産駒の割合で 3 つに分けた結果です。
| 2 歳で勝ち上がった割合 | 頭数 | 5 年目 ÷ 4 年目 | 5 年目に増えた割合 |
|---|---|---|---|
| 低い(約 11%) | 57 頭 | 0.58 倍 | 23% |
| 中くらい(約 17%) | 57 頭 | 0.89 倍 | 40% |
| 高い(約 24%) | 59 頭 | 1.09 倍 | 61% |
次に、重賞を勝つ大物が出たかどうかで分けた結果です。
| 初年度産駒の成績 | 頭数 | 5 年目 ÷ 4 年目 | 5 年目に増えた割合 |
|---|---|---|---|
| 2 歳で重賞勝ちあり | 26 頭 | 1.25 倍 | 65% |
| 3 歳春(5 月まで)に G1 勝ちあり | 15 頭 | 1.23 倍 | 87% |
| 2 歳で重賞勝ちなし | 147 頭 | 0.85 倍 | 37% |
| 2 歳でも 3 歳春でも重賞勝ちなし | 119 頭 | 0.75 倍 | 31% |
※倍率は中央値です。重賞は JRA の平地重賞(G1〜G3)で数えています。
5 年目は、初年度産駒の 2 歳戦の結果で分かれます。
勝ち上がりが多かった父も、重賞を勝つ大物が出た父も、5 年目に頭数を増やしています。
逆に、2 歳で勝ち上がった産駒が 1 割ほどにとどまった父は、5 年目に頭数を 4 割以上減らしました。
5 年目の種付けシーズンは、初年度産駒が 3 歳春のクラシックを走る時期と重なります。
この時期に G1 馬が出た父は、87% が 5 年目に頭数を増やしました。
実際の例を挙げると、次のとおりです。
- キタサンブラック:イクイノックスが東京スポーツ杯 2 歳 S を勝った翌年、102 頭から 178 頭へ
- キズナ:ビアンフェが函館 2 歳 S を勝った翌年、164 頭から 242 頭へ
- ドレフォン:ジオグリフが札幌 2 歳 S を勝った翌年、172 頭から 198 頭へ
- ロードカナロア:アーモンドアイが桜花賞・オークスを勝った年、250 頭から 307 頭へ
一方でレイデオロは、初年度産駒の 2 歳での勝ち上がりが 1 割ほどで、3 歳春までに重賞勝ちもありませんでした。
5 年目は 149 頭から 39 頭へ大きく減っています。
ただし、大物が出ても減った例もあります。
オルフェーヴルは初年度産駒のラッキーライラックが阪神 JF を勝ち、エポカドーロが皐月賞を勝ちましたが、5 年目は 191 頭から 136 頭に減っています。
リアルスティールもオールパルフェがデイリー杯 2 歳 S を勝ちましたが、5 年目は 151 頭から 118 頭に減りました。
リアルスティールはその翌年、2 世代目のフォーエバーヤングの活躍と時期を同じくして 187 頭まで増えています。
重賞を 1 つ勝つだけでは足りず、勝ち上がりの多さも含めて「この父の子は走る」と思わせられるかが分かれ目と言えます。
平均型と一発型、長く支持されるのはどちらか
では、供用が長くなってからも頭数を保てるのは、どんな父なのでしょうか。
8 年以上供用され、中央で 300 頭以上の産駒が走った 56 頭を、2 つの物差しで 4 つの型に分けました。
- 平均:中央で走った産駒のうち、勝ち上がった割合(中央値は 35.2%)
- 一発:中央で走った産駒 100 頭あたりの JRA の G1 馬の数(中央値は 0.25 頭)
| 型 | 頭数 | 6〜10 年目の頭数(1 年目比) | 主な父 |
|---|---|---|---|
| 平均も一発も高い | 17 頭 | 95% | ディープインパクト・キングカメハメハ・ハーツクライ |
| 平均が高い(安定型) | 11 頭 | 83% | サクラバクシンオー・タイキシャトル・ヘニーヒューズ |
| 一発が多い(一発型) | 11 頭 | 64% | ダンスインザダーク・ハービンジャー・オルフェーヴル |
| どちらも低い | 17 頭 | 56% | タニノギムレット・ブラックタイド |
長く支持されるのは、平均の高い父です。
安定型は 6〜10 年目も 1 年目の 83% を保っていますが、一発型は 64% まで減っています。
供用が長くなってからは、大物の出やすさよりも平均のほうが、頭数を保てるかどうかと強く結びついていました。
生産者にとっては、大物が出るかどうかより「生まれた子が中央で確実に勝ち上がるか」のほうが、毎年の判断材料になるのでしょう。
オルフェーヴルは、G1 馬の出やすさは中央値より上ですが、中央の勝ち上がり率は 32.9% と中央値を下回る一発型です。
なお、ここで数えた G1 は JRA の平地 G1 だけです。
オルフェーヴル産駒のマルシュロレーヌ(BC ディスタフ)やウシュバテソーロ(ドバイワールドC)のような海外・地方の大レースは入っていないので、一発の強さは実際より小さく出ています。
また、頭数の多い父ほど良い繁殖牝馬が集まり、それで勝ち上がり率が上がるという逆向きの関係も考えられます。
「平均が高いから頭数が保たれる」と言い切れるわけではない点には注意してください。
主な種牡馬の種付け頭数(2023〜2025 年度)
当サイトで記事にしている種牡馬の、直近 3 年の種付け頭数です。
2025 年度の頭数が多い順に並べ、父の名前から個別の記事に移れるようにしています。
| 種牡馬 | 2023 年度 | 2024 年度 | 2025 年度 | 2026 年度の種付料 |
|---|---|---|---|---|
| イクイノックス | - | 204頭 | 206頭 | 2,500万円 |
| ドウデュース | - | - | 202頭 | 1,000万円 |
| キタサンブラック | 242頭 | 191頭 | 198頭 | 2,500万円 |
| エピファネイア | 124頭 | 132頭 | 198頭 | 1,500万円 |
| キズナ | 152頭 | 218頭 | 185頭 | 2,000万円 |
| コントレイル | 212頭 | 206頭 | 185頭 | 1,800万円 |
| エフフォーリア | 198頭 | 202頭 | 183頭 | 400万円 |
| サリオス | 176頭 | 197頭 | 182頭 | 200万円 |
| リアルスティール | 118頭 | 187頭 | 174頭 | 1,000万円 |
| ドレフォン | 125頭 | 140頭 | 173頭 | 800万円 |
| チュウワウィザード | 193頭 | 150頭 | 163頭 | 150万円 |
| ロードカナロア | 120頭 | 109頭 | 159頭 | 1,200万円 |
| タイトルホルダー | - | 159頭 | 151頭 | 350万円 |
| サートゥルナーリア | 201頭 | 157頭 | 139頭 | 1,000万円 |
| ウィルテイクチャージ | 174頭 | 86頭 | 114頭 | 120万円 |
| オメガパフューム | 155頭 | 126頭 | 110頭 | 50万円 |
| モーリス | 158頭 | 122頭 | 97頭 | 600万円 |
| リオンディーズ | 78頭 | 86頭 | 93頭 | 500万円 |
| ホットロッドチャーリー | 133頭 | 94頭 | 90頭 | 150万円 |
| カラヴァッジオ | 128頭 | 70頭 | 80頭 | 300万円 |
| レイデオロ | 149頭 | 39頭 | 61頭 | 200万円 |
| マカヒキ | 104頭 | 70頭 | 54頭 | 50万円 |
| グローリーヴェイズ | 51頭 | 47頭 | 32頭 | 80万円 |
| ステルヴィオ | 91頭 | 52頭 | 31頭 | 80万円 |
| インティ | 75頭 | 41頭 | 25頭 | 50万円 |
| ジャンダルム(2025年2月死亡) | 70頭 | 51頭 | 3頭 | - |
※ドゥラメンテは 2021 年に急逝したため、一覧から外しています。フライトラインは米国で供用されているため、日本の種付け頭数はありません。
1 年目からの細かい推移と、その父ならではの読みどころは、それぞれの記事の「種付頭数はどう推移しているか」で解説しています。
一口馬主・POG ではどう使うか
ここまでの傾向を、父や世代を選ぶときの確認手順にまとめます。
- 世代を特定する:募集馬・指名候補の生年から 1 を引くと、その世代の種付年度がわかります
- その年度の頭数を 1 年目と比べる:3〜4 年目で 8 割以上を保っていれば、デビュー前から期待の高い父です
- 5 年目以降は増えたか減ったかを見る:増えていれば、初年度産駒の結果が生産者に評価された父です
- 大物だけでなく勝ち上がりの多さも確かめる:長く頭数を保つ父は、平均的な勝ち上がりが多い傾向があります
頭数の多い世代ほど、募集やPOGの候補に挙がる産駒も多くなります。
逆に頭数が急に減った年の世代は候補が少ないので、早めに絞り込んでおくと選びやすくなります。
まとめ
- 種付け頭数は、初年度産駒のデビュー前の 3〜4 年目に 1 年目の 8 割前後まで減るのが普通です
- 5 年目に増えるかどうかは、初年度産駒の 2 歳戦の成績(勝ち上がりの多さと大物の有無)で大きく分かれます
- その後も頭数を保てるのは、勝ち上がりの多い「平均の高い父」です
気になる父がいたら、まず直近の頭数を 1 年目と比べてみてください。
次に読むべき記事
- 父ごとの産駒の特徴を見たい → 種牡馬記事一覧
- 初年度産駒がデビューした父を横並びで見たい →2026 年デビューの新種牡馬ガイド
- 雨の日に父から狙いを立てたい → 種牡馬の道悪・重馬場適性まとめ
データの出典・集計基準
- 出典:JRA 公式・JBIS Search の公開データをもとに当サイトが集計
- 種付け頭数・産駒成績:JBIS Search の種牡馬成績(世代・年次別)。2025 年度の種付けまで
- 対象:中央の年度別サイアーランキング(2016・2021・2026 年度)の上位 200 頭と、当サイトで記事にしている父のうち、日本で種付けの記録がある 254 頭
- 重賞:JRA の平地重賞(G1〜G3)の勝ち馬。1998 年 1 月〜2026 年 5 月
- 供用年数:種付けが 20 頭以上あった最初の年度を 1 年目として数えています
- 更新頻度:新しい年度の種付け頭数が JBIS に反映されたら見直します
